「そこに山があるから。」
イギリスの登山家、ジョージ・マロリーの言葉は、今日ではあまりにも有名だ。
彼の一言は多くの登山家が共感するもので、同時に人々を惹きつける山の魅力を端的に表している。
現代、山に登るのは登山家だけではない。
インフラの発達に伴って、山岳部にもアスファルトが敷かれた。
人力の集大成である自転車に跨って、天空へ繋がる山道を駆け上がる。
サイクリストが山に惹きつけられるのは必然と言えよう。
来たる2021年11月28日、坂に惹きつけられた4人の男がサイクリストの聖地・飯能に集った....!!!
はい、茶番にお付き合い頂きありがとうございます。
当サークル所属、早稲田大学商学部4年のIです。
本来ならそろそろ卒業ですが、留年が決まったためサークル活動を継続しています(泣)
冒頭のめんどくさそうな文章も、「せめて今だけはインテリに思われたい」という留年生なりの意地です。
うわ、文字に起こしたら悲しくなってきたぞ。。。
今回初めてのブログということで軽く自己紹介させていただきます。
実は4年生と言っても昨年6月に加入した新参者になります。
サークル3年の友人N君(Colnago)と茨城から静岡まで自転車で向かった際、
「意外と漕げるねぇ。うちのサークル来る?」
と勧誘を受けて電撃加入したシンデレラボーイです。
大学4年から始めるサークル活動は非常に楽しいもので、毎回のように走行会に参加させていただいてます。
留年したので実質3年生だけど。
愛車はエディメルクスのクロモリで、大学の授業を切って地元の筑波山でよくヒルクライムしています。
「え、クロモリで坂バカ?やばくない?死なない?」
普通にやばいです。毎回死にそうです。
でもなんでですかね、坂って無性に魅かれるんですよね~(洗脳済み)
今回はそんな坂バカたちのお話です。
≪第一章≫子の権化峠(ねのごんげ-とうげ)
飯能駅に到着して最初に向かったのは子の権化峠だった。
数々の雑誌やブログでも紹介される関東屈指の激坂。他ブログによると最大斜度28%とか。
え。。。。。
斜度が10%を超えれば激坂と言われるロードバイク界において、28%。。。
うん、それは坂じゃねぇな(苦笑い)
今回走行会に参加した4人のうち、登ったことがあるのは飯能を練習拠点にする2年O君(GUSTO)のみ。
「あそこは、1回行ったらもういいやってなるよ」と帰還者からの貴重なお言葉をゲット。
このとき下調べをしていない僕は、「まぁ筑波山くらいかなぁ(ハナホジ)」と舐め腐っていた。(死亡フラグ)
最初は5%程度の比較的緩やかな斜度が続く。
途中未舗装路もあり、いかにも秘境という感じ。
「全然余裕じゃん」と高をくくっていると。。。。
斜度10~15%の激坂が登場。
思わず「なかなかきついっすね~」と漏らす僕。
すかさず「これはまだフルコースでいう前菜レベルですね」とO君。
まっ、マジっすか~~~。。。。。
アウター縛りで登っていた僕はすでに限界だ。
アウター縛りというのは、内側のチェーンリングを使用しないヒルクライムである。
ていうか、今更だけどなんでアウター縛りしていたんだろう。我ながらバカすぎる。。。
「もう無理!!!」「死にそう!!!」
醜い叫び声を出しながら必死に上ること数キロ。
ついにメインディッシュが眼前に立ちはだかる。
「うわ、行き止まりじゃん」
激坂特有の丸印が埋め込まれたコンクリートの壁。
よく見ると壁ではない。
これは舗装路だ。とんでもなく急な舗装路だ。
全身の体重を乗せてペダルを踏み込む。
「うおぁ!!!」「うおぁ!!!」
踏み込みのたびに声を上げる。
ペダルのひと踏みが全力だ。
いや、全力で踏まねば押し返されてしまう。
押し返されてしまったら最後、自転車は失速し横転する。
「うおぁ!!!」
バチィィィン!!!!
急にバランスを崩す僕。反射的に足を出して倒れるのを何とか防ぐ。
「転倒しなくてよかったけど.......俺なんで足出せたの?」
足元を見ると、ビンディングされていた足が地面の上にありました。
なるほど、踏み込みに耐え切れずビンディングが外れてしまったみたい。
そんなことってあるんですねぇ。
気を取り直して漕ぎ始めようとするも、そこは斜度20%を超える坂。
当時ビンディングペダル使いはじめだった僕はリスタートできるはずもない。
「うーん、仕方ない。。。」
一度下ってその間に嵌めなおし,それからまた登ることにしました。
「気を取り直していくぞ!!!」
恐らく先にゴールしているだろうメンバーの元へ向かう。
ゆっくりと、しかし確実にペダルを回していると、、、
はい、こんにちは!斜度28%さん!!!!
ついに姿を現した最大斜度。
本当はブログ用に写真を撮りたいけど、一度でも立ち止まれば復帰はまず不可能。
「仕方ない、俺の天才的な文章で読者にイメージしてもらおう。」
「てか、坂の写真なら検索すればたくさん出てくるし、僕が無理して撮る意味ないよね」
己に眠る坂バカの血が騒ぐ。
「イン側を攻めてこその完登だ!!!」
急斜面の内側に勇猛果敢に挑むその走りは、まだ走行会が始まったばかりであり、これから沢山の峠に行くことを完全に忘れている。
気持ちは完全にラスボス戦だ。
「うぉぉぉぉぉぉぉ」
漫画の主人公になった気分だったのだろう。一丁前に声を張り上げる。
中二病だ。中二だもん、そりゃ大学留年も当たり前やな笑←これが言いたかっただけ
そして、、、、
完登!!!!!!
既にゴールしていた2年O君と1年M君(Bianchi)が頂上で祝福してくれた。
数分後、途中ではぐれてしまった幹事長K(Willier)も峠に到着。
エアロロードにディープホイールを装着する生粋のスプリンターの彼にとって、
坂は天敵である。ていうか坂ばっかの飯能に来てくれてありがとう。
次の走行会は平地にしようね♡
無事、今回の参加メンバー全員が子の権化峠を登りきった。
頂上でお互いがきつかったポイントを話して盛り上がる。
ペダルを跳ね返す絶壁の辛さは、登ったものにしか分かち合えない。
まるで重大な秘密を共有したような仲間意識が生まれる。
みんなで山に登る楽しさとは、この瞬間に詰まっているのかもしれない。
↑峠に揃う4台の自転車。これより先は神社の境内であり、徒歩のみ通行可能である。
「さて、そろそろ下りますか。」
そういって峠の反対側へ下ろうとすると.............
終わりかけの紅葉の先に、都心のビル群を望む絶景!
いやー登った甲斐がありますね。
なお、私にとってこの日最高の景色でした。
眼福でやぁ~
≪第二章≫天目指峠(あまめざす-とうげ)
子の権化を下った後、今度は天目指峠を目指した。
ところで、天目指ってめっちゃかっこよくない??
めっちゃかっこいいよね!
あまめざすを、めざす!笑
いやもう最高かよ!(←何がw)
実はこの峠、1年M君の希望で今回のコースに編入された。
「いや、だって名前がかっこいいじゃないですか」と本人談。
あ、みんな名前に惹かれてるじゃん笑
平均斜度は8%弱の2.6キロの坂だ。
なかなかの坂である。
そう、昨日までの僕たちにとっては。
我々は子の権化峠で感覚がマヒしてしまった。
28%の激坂を上った後だ。無理もない。
斜面が平地に思えてくる。
久しぶりの””平地””にテンションが上がる1年M君。
いきなりスプリントで飛び出す。
すかさず反応する2年O君と僕。
さぁ、レースの始まりだ!
思いのほかゴールまでが長い。
M君はスプリントを緩め、一旦集団(と言っても2人)に合流した。
「いやー、よく体力残っていたね」
「もう使い切りましたよ」
弱弱しい言葉とは裏腹に、お互いが次の飛び出すタイミングを探り合う。
M君が再び仕掛ける。
このM君、都心の自宅から飯能まで交通費を浮かすために自走してきており、既に50キロ以上漕いでいた。
体力がバケモンすぎる。というか、若いっていいな(今年23歳の心の声)
スプリントを追わない選択肢はない。
短い峠でスプリントを追えなければ、その瞬間に負けてしまう。
仕掛けられたら全力で追いかける。悩む瞬間などない。
また少し経つと集団にM君が吸収された。
「ふぅ、これで一休み......」
そんな安息の束の間、M君の合流と同時に、今度は2年O君がカウンターを繰り出す。
残された2人はスキを突かれ出遅れる。恐ろしく完璧なタイミングだ。
必死に食らいつくM君と僕。もはやプライドの戦いである。
先ほど子の権化峠で分かち合った仲間意識はどこへやら、完全に敵同士となった。
それから数回仕掛け合ったのち、3人で仲良くゴールした。
峠に着けば仲間に戻る。頂上で、3人だけが知る秘密のレースを振り返って盛り上がった。
数分後、唯一レースに参加しなかった、懸命な幹事長Kも到着。
「3人の体力がなくなるまでレースしていました」と報告。
「いや、まだ峠あるの忘れてるでしょ」と適切な突っ込みを入れるK君。
君が幹事長でほんと良かったよ(感涙)
≪第三章≫山伏峠(やまぶし-とうげ)
天目指峠での(不毛な)レースで(無駄に)体力を消耗しきった坂バカ3人。
「まだまだ峠はあるし、この峠ではレースはやめましょう」と停戦協定を結んだ。
4キロちょっとの峠で平均斜度7%のこの峠。
歴戦の戦士である我々には余裕である.......はずだった。
先ほどのレースの首謀者M君が突然のペースダウン。
「先に行ってください」
本来の彼は体力も脚力もあり、この程度の峠でペースを落とすことはまずない。
彼はハンガーノックの状態だ。いわゆるガス欠である。
都心から自走してきたうえにスプリントを何度もかければ、相当なエネルギーを消費する。
「とりあえず俺ら先行くから、水と補給食食べてゆっくり来て」
戦友を残し、僕とO君は峠を目指す。
最後までレースせずに登頂した。やはりM君が諸悪の根源。。。
10分後ぐらいだろうか。M君と幹事長Kも峠に着いた。
「体調大丈夫?」「すぐ飯食いに行きましょう」
「写真だけとりますか!」「じゃ、””アレ””やりましょう!」
そんな話をしていると、我々の後からお姉さま方も登頂。
つい最近ロードバイクを始めたというお姉さまの足元にはエアマックス95が。
いや、始めたばかりでビンディングも使わずに足付き無しで登頂は凄すぎません?
僕にもその剛脚分けてください。。。
一緒に写真を撮ろうと誘われるも、緊張で顔を引きつる陰キャラの僕たち。
これが、女子にモテる努力よりもチャリ漕ぎを優先してきた男たちの末路である。
このブログ読んでるみんなはホイールなんてわけわかんないものに金かけてないで、しっかりファッションに投資しましょうね。
↑6台が並ぶと圧巻。※車の往来の妨げにならないよう、十分配慮したうえで撮影しています。
お姉さま方にも別れを告げ、我々は正丸峠にあるレストランを目指す。
正丸峠(しょうまる-とうげ)、到着~~~~!!!
なんとかゴール。もうみんな腹が減って死にそうである。
↑僕が選んだのは山賊カレーライス大盛とおしるこ。
なお、全員山賊カレー大盛を注文していた。
メニュー表で一番カロリー高そうなものを選んだら奇跡的に全員一致してしまった。
ここでエネルギーを蓄え、午後に控える最終決戦に向かう。
≪第四章≫刈場坂峠(かばさか-とうげ)
一度屋内で休んでしまうと、体は一気に冷える。
昼飯を食べて外に出た時、思わず「さむっ」と言葉が漏れる。
冬の汗冷えは、自転車乗りにとっての大敵だ。
正丸峠からのダウンヒルは、ヒルクライムとは別の精神力が必要だ。
風圧に凍える体をさすりながら、刈場坂峠の入口へと向かう。
刈場坂峠は全長5.7キロ、平均登り斜度10%以上というなかなかの難易度だ。
しかし、登り切れるかなど僕達にはどうでもよかった。
天目指峠でつかなかった決着を今こそつけよう。
誰も言わないが、全員が思っていたし、お互いの心を読めていた。
「レースせずにゆっくり登りましょう」とO君。
O君、M君、私が一定のペースで談笑しながら漕いで終盤に差し掛かる。
急にO君がカチカチ...とギアを上げた。その瞬間、
「レーススタート!!!!」
一気に飛び出す。慌てて追おうとするM君と私I。
クロモリフレームに跨る私は、フレームの性質上、どうしても加速にラグがある。
一瞬の加速勝負では絶対に勝ち目がない。
仕方ない........!!!!!!
ここで、ギアを上げて秘策の引き足ダンシングを使う。
アウターハイに入れて体を起こし、引き足の出力を最大限まで上げる僕の奥の手である。
天目指峠での勝負の際に、今後を考えて引き足を残していた。(めちゃめちゃ中二展開)
これならクロモリの反応性でも追える。
お互いが出し惜しみなしでスプリントをかけあう。
ハンガーノックから病み上がりということもあるだろう、M君が戦線から離脱してしまった。
勝負はO君と僕の一騎打ち。2人とも出し惜しみせず全力でペダルを回す。もう秘策などない。
お互いが仕掛けては追いつき、追いついた瞬間にカウンターを仕掛ける。これを延々と繰り返す。完全に弱〇ペダルである。
明確なゴールラインがあるわけではないので勝敗は正確にはわからない。
ただ、頂上でお互いをたたえ合ったことは事実である。
↑刈場坂峠駐車場に集う本日の主役たち。M君考案のヘルメットをペダルに嚙合わせるスタンドで自立する。LOOKペダルだと安定感が増すらしい。
秩父方面を望む景色のはるか先には、赤城山もそびえる。
「そういや、赤城山のヒルクライムってめちゃきついらしいですよ」
坂バカは一生坂バカである。死ぬ思いをしても治らない。
どんなにきつい坂でも、またすぐに坂に上りたくなってしまう。
「そこに山があるから」
ここで実家に自走するO君と別れ、残った3人は飯能駅を目指して尾根の道を走り抜ける。
道路を走っていると無数の峠に出会う。「飯盛峠」「檥峠」、、、、、尾根である以上仕方ないが、峠のオンパレードである。峠稼ぎしている人にはお勧めである。峠稼ぎが一体何か僕にもわからないけど汗
そんな感じで漕いでいたら陽も沈み、ダウンヒルがメインなことも相まって寒くなってきた。
あぁぁああぁ、凍える。早く帰りたい(切実)
飯能駅に着くころには寒さで話せなくなっていた。ブルブル震えながらロータリーの隅で輪行の準備を行う。
駅構内の貸ロッカーに着替えを入れていたので、汗が染みたサイクルウェアを脱ぎ捨て、温かい衣服に着替える。
この辺りは留年生とは思えない頭の回りである。
こんな感じでサイクリストの聖地・飯能での走行会は幕を閉じました。
昨年11月末のことを今更書くのもなかなか面白いものですね。
夏休みの宿題をさぼり続けて冬休み明けに提出した中学時代を思い出します。
このエピソードは書きながら思い出したんですけど、うーん、このころから留年の片鱗があったのかなぁ。
さて、今回の記事は楽しんでもらえたでしょうか。
実はこれ、僕がテスト期間中に勉強さぼる口実で書き連ねてた文章なんですよ。お前は勉強しろ。
道理で長いわけですね。こんな長文読んだ君は既にNogleis Racing Teamに興味を持っています。
さっさとツイッターなりインスタのDMで入会希望のメッセージを送ってください。
公式インスタグラム↓
公式ツイッター↓
当サークルはインカレなので、早稲田以外の他大学の方も多く在籍しています。
早稲田以外の大学の方や、女性の方も絶賛募集中です。
初心者の方やロードバイクを持っていなくても参加可能です。
体験走行会も行っていますので、ぜひ一度参加してみてください。
ブログ担当のような明るく楽しいメンバーが揃っています。
是非、入会を待っています。
恥ずかしいのでブログの最後に書きます。
この日、本当は飯能から実家まで自走するつもりでした。
勿論寒かったというのもありますが、最大の理由はほかにあります。
すべての峠を上り終わった後、自宅までのルートを調べた際、帰り道に””あるもの””があったからです。
さて、その””あるもの””とはなんでしょう~~~????(クイズふしぎ発見風)
ヒントは一番最初に出てきましたよね。
そう。
「そこに山があるから。」
ほんじゃ、次回のブログでお会いしましょう!ばいばい!